若桜鬼ヶ城 八頭郡 鳥取県

若桜鬼ヶ城 八頭郡 鳥取県
所在地 〒680-0742 鳥取県八頭郡若桜町三倉

若桜鬼ヶ城 八頭郡 鳥取県 | 因幡三名城の歴史と見どころを徹底解説

概要

若桜鬼ヶ城(わかさおにがじょう)は、鳥取県八頭郡若桜町若桜に所在する中世から近世初期にかけての山城跡です。標高452メートルの鶴尾山(つるおさん)の山頂に築かれ、鳥取城、鹿野城とともに「因幡三名城」のひとつに数えられる名城として知られています。

城跡は1987年(昭和62年)に国の史跡に指定され、2017年(平成29年)には「続日本100名城」(167番)に選定されました。総石垣造りの山城として、本丸、二ノ丸、三ノ丸など多数の曲輪が良好な状態で残されており、特に「行き止まり虎口」や「廊下橋」といった特徴的な防御施設は全国的にも珍しい遺構として高く評価されています。

古くは「鬼山」と呼ばれ、鬼神が住んでいたという伝承が残る地でもあります。城跡付近までは林道が整備されており、車でアクセスできるため、山城としては比較的訪れやすい史跡となっています。城跡からは若桜の町並みや周辺の山々を一望でき、春には桜、秋には紅葉と四季折々の景観を楽しむことができます。

若桜鬼ヶ城の基本情報

  • 別名:鬼ヶ城、若桜城、鬼山城
  • 所在地:鳥取県八頭郡若桜町大字若桜
  • 標高:452メートル(鶴尾山山頂)
  • 比高:約230メートル
  • 城郭構造:山城、総石垣造り
  • 築城年代:建仁年間(1201~1204年)頃
  • 築城主:矢部暉種(やべてるたね)
  • 主要城主:矢部氏、尼子氏、毛利氏、木下重堅、山崎家盛
  • 廃城年:元和3年(1617年)
  • 指定文化財:国指定史跡(1987年指定)
  • 続日本100名城:167番

歴史

鎌倉時代の築城と矢部氏の時代

若桜鬼ヶ城の創建は、建仁年間(1201~1204年)に矢部暉種によって築かれたとされています。矢部氏は因幡国の有力国人として、鎌倉時代から戦国時代にかけて若桜地域を支配しました。若桜は播磨国・但馬国へ通じる街道の結節点に位置しており、交通の要衝として戦略的に重要な地点でした。

矢部氏は代々この地を治め、若桜鬼ヶ城を居城としていましたが、戦国時代には周辺の勢力争いに巻き込まれることになります。

戦国時代の攻防

戦国時代に入ると、若桜鬼ヶ城は因幡国を巡る争奪戦の舞台となりました。天文年間(1532~1555年)には尼子氏の勢力下に入り、その後は毛利氏と尼子氏の抗争の最前線となります。

天正年間(1573~1593年)には、織田信長の命を受けた羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)による中国攻めの影響を受けます。天正8年(1580年)、秀吉配下の木下重堅が若桜鬼ヶ城に入城し、城主となりました。木下重堅は城の改修を行い、総石垣造りの近世城郭としての基礎を築いたとされています。

関ヶ原の戦い後と山崎家盛の時代

慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦い後、因幡国は池田長吉の所領となりましたが、慶長6年(1601年)には山崎家盛が若桜鬼ヶ城の城主として入城しました。山崎家盛は3万石を領し、若桜の城下町整備を進めました。

山崎家盛の時代には、城郭の大規模な改修が行われ、現在見られる石垣の多くはこの時期に構築されたものと考えられています。本丸には複合式天守が建てられ、城下には武家屋敷や町人町が整然と配置されました。

一国一城令による廃城

元和3年(1617年)、江戸幕府による一国一城令の施行に伴い、若桜鬼ヶ城は廃城となりました。この際、建造物は取り壊され、石垣の一部も破壊される「破城」の処置が施されました。現在も見られる石垣の崩れた部分は、この破城の痕跡と考えられています。

廃城後、山崎家盛は鳥取藩の家老として鳥取城下に移り、若桜は鳥取藩の陣屋町として存続しました。城下町の町並みは現在も良好に保存されており、令和3年(2021年)8月には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

若桜鬼ヶ城の見どころと構造

縄張りと曲輪配置

若桜鬼ヶ城は鶴尾山の山頂を中心に、複数の曲輪が配置された複雑な縄張りを持っています。主要な曲輪として、本丸、二ノ丸、三ノ丸、ホウズキ段、六角石垣などがあり、それぞれが石垣で囲まれています。

山頂の本丸は東西約40メートル、南北約30メートルの規模で、かつては複合式天守が建てられていました。本丸の石垣は高さ5~8メートルにも及び、総石垣造りの山城としての威容を今に伝えています。

行き止まり虎口

若桜鬼ヶ城の最大の特徴のひとつが「行き止まり虎口」です。これは敵を袋小路に誘い込んで攻撃する防御施設で、全国的にも珍しい構造として知られています。石垣で囲まれた通路が突然行き止まりになっており、侵入した敵兵を三方から攻撃できる仕組みになっています。

この独特の防御構造は、山城における防御技術の高さを示すものとして、城郭研究者から高く評価されています。

廊下橋

「廊下橋」は、本丸と二ノ丸を結ぶ橋で、石垣の間に架けられた木橋の跡です。現在は橋本体は失われていますが、両側の石垣に橋を支えた痕跡が残されています。この廊下橋も全国的に珍しい構造で、城内の移動と防御を兼ねた施設として注目されています。

六角石垣

本丸東側には「六角石垣」と呼ばれる特徴的な石垣があります。これは六角形に突き出た石垣で、死角を減らし、より広い範囲を防御できるように設計されています。この種の石垣は全国的にも珍しく、若桜鬼ヶ城の石垣技術の高さを示す遺構のひとつです。

石垣の特徴

若桜鬼ヶ城の石垣は、自然石をそのまま積み上げた「野面積み」を基本としながら、一部には加工した石を用いた「打込接ぎ」の技法も見られます。石材は地元で産出する花崗岩が使用されており、400年以上経過した現在も堅牢に残されています。

破城の際に崩された石垣もありますが、それも含めて城の歴史を物語る重要な遺構として保存されています。

天守台

本丸には天守台が残されており、ここには複合式天守が建てられていたと考えられています。天守台からは若桜の町並みや周辺の山々を一望でき、城の立地の良さを実感できます。晴れた日には遠く日本海まで見渡すことができます。

続日本100名城スタンプ情報

若桜鬼ヶ城は2017年に「続日本100名城」の167番に選定されました。スタンプは以下の場所で押すことができます。

スタンプ設置場所

  • 若桜町観光案内所:若桜駅舎内にあり、若桜鉄道の駅舎と一体となっています。営業時間は9:00~17:00(年末年始を除く)。城跡へのアクセス情報やパンフレットも入手できます。
  • 若桜郷土文化の里:若桜町の歴史や文化を紹介する施設で、若桜鬼ヶ城に関する展示もあります。

スタンプを押す際には、城跡の写真撮影や登城記念として、ぜひ実際に城跡を訪れることをおすすめします。

交通アクセス

公共交通機関でのアクセス

鉄道

  • JR因美線「郡家駅」から若桜鉄道に乗り換え、「若桜駅」下車(約30分)
  • 若桜駅から城跡登山口まで徒歩約15分
  • 登山口から本丸まで徒歩約40~50分

若桜鉄道は昭和5年製の蒸気機関車も保存されており、鉄道ファンにも人気の路線です。若桜駅舎自体も国の登録有形文化財に指定されています。

自動車でのアクセス

高速道路から

  • 鳥取自動車道「河原IC」から国道29号経由で約30分
  • 中国自動車道「佐用IC」から国道373号・29号経由で約60分

林道利用

  • 若桜町市街地から林道を利用して城跡近くまで車でアクセス可能(約15分)
  • 城跡駐車場(無料、約10台)から本丸まで徒歩約15分

林道は舗装されていますが、道幅が狭い箇所もあるため、運転には注意が必要です。特に冬季は積雪や凍結の可能性があるため、事前に若桜町観光案内所で道路状況を確認することをおすすめします。

駐車場情報

  • 城跡駐車場:無料、約10台(林道終点付近)
  • 若桜駅前駐車場:無料、約20台

登城のポイントと注意事項

服装と装備

若桜鬼ヶ城は標高452メートルの山城であり、登城には以下の準備が必要です。

  • 履物:滑りにくいトレッキングシューズや運動靴が必須
  • 服装:動きやすい服装、季節に応じた防寒着や雨具
  • 持ち物:飲料水、タオル、虫除けスプレー(夏季)
  • その他:カメラ、双眼鏡、城郭ガイドブックなど

登城時間の目安

  • 徒歩登山口から:往復約2時間(見学時間含む)
  • 林道駐車場から:往復約1時間(見学時間含む)

時間に余裕を持った計画を立て、日没前には下山できるようにしましょう。

季節ごとの見どころ

春(3月下旬~5月)

  • 桜の開花時期には城跡周辺が桜に彩られます
  • 新緑の中での登城は爽快で、気候も登城に適しています

夏(6月~8月)

  • 緑豊かな森林の中を登城できます
  • 虫除け対策と水分補給を忘れずに

秋(10月~11月)

  • 紅葉が美しく、城跡からの眺望も最高です
  • 登城に最適な季節のひとつです

冬(12月~2月)

  • 積雪がある場合は登城が困難になることも
  • 冬季は事前に道路状況を確認してください

若桜鬼ヶ城に関する文献

若桜鬼ヶ城に関する主要な文献資料としては、以下のものがあります。

古文書・記録

  • 『因幡民談記』:江戸時代中期に編纂された因幡国の地誌で、若桜鬼ヶ城の記述があります
  • 『因幡志』:因幡国の歴史を記した書物で、城の構造や城主に関する記録が含まれています
  • 『若桜町史』:若桜町の歴史を詳細に記録した町史で、鬼ヶ城に関する章があります

研究書・調査報告書

  • 『若桜鬼ヶ城跡調査報告書』(若桜町教育委員会):発掘調査の成果をまとめた報告書
  • 『鳥取県の中世城館分布調査報告書』(鳥取県教育委員会):県内の中世城館を網羅的に調査した報告書
  • 『続日本100名城公式ガイドブック』(日本城郭協会監修):続日本100名城の公式ガイド

学術論文

近年では、若桜鬼ヶ城の石垣構造や防御システムに関する研究論文が複数発表されており、城郭研究の分野で注目を集めています。特に「行き止まり虎口」の構造分析は、中世から近世への城郭技術の変遷を知る上で重要な研究対象となっています。

周辺の見どころ

若桜宿の町並み

若桜鬼ヶ城の城下町として発展した若桜宿は、令和3年(2021年)に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。江戸時代から昭和初期にかけての町家が軒を連ね、「仮屋・蔵通り」と呼ばれる美しい町並みが保存されています。

白壁の土蔵や格子戸の町家が並ぶ通りを散策すると、江戸時代の宿場町の雰囲気を体感できます。

若桜鉄道

若桜鉄道は郡家駅から若桜駅までを結ぶローカル鉄道で、昭和5年製のSL(C12形167号機)が保存されています。若桜駅では転車台の実演も見学でき、鉄道ファンにも人気のスポットです。

不動院岩屋堂

若桜町の山中にある古刹で、巨岩の下に建てられた懸造りの本堂が印象的です。国の重要文化財に指定されており、若桜鬼ヶ城とあわせて訪れる価値があります。

氷ノ山

鳥取県と兵庫県の県境に位置する標高1,510メートルの山で、中国地方を代表する名峰です。登山やスキーが楽しめ、若桜町の観光拠点のひとつとなっています。

若桜鬼ヶ城の文化財としての価値

若桜鬼ヶ城が国の史跡に指定され、続日本100名城に選定された理由は、その歴史的・学術的価値の高さにあります。

歴史的価値

鎌倉時代から江戸時代初期まで、約400年にわたって因幡国東部の要衝として機能した若桜鬼ヶ城は、中世から近世への城郭の変遷を示す重要な遺跡です。特に戦国時代から江戸時代初期にかけての石垣造りの技術を今に伝える貴重な史跡となっています。

学術的価値

総石垣造りの山城として、本丸、二ノ丸、三ノ丸など多数の曲輪が良好に残されており、城郭研究において重要な資料となっています。特に「行き止まり虎口」「廊下橋」「六角石垣」などの独特の防御施設は、全国的にも珍しい構造として学術的に高く評価されています。

景観的価値

鶴尾山の山頂に築かれた城跡からは、若桜の町並みや周辺の山々を一望でき、日本の原風景ともいえる美しい景観が広がっています。春の桜、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季折々の表情を見せる城跡は、歴史的価値だけでなく景観的価値も高い場所です。

保存と活用の取り組み

若桜町では、若桜鬼ヶ城跡の保存と活用に積極的に取り組んでいます。

整備事業

国史跡指定後、若桜町教育委員会を中心に、城跡の整備事業が進められています。石垣の修復、登城道の整備、案内板の設置などが行われ、訪問者が安全に見学できる環境が整えられています。

調査研究

継続的な発掘調査や測量調査が行われ、城の構造や歴史の解明が進められています。これらの調査成果は報告書としてまとめられ、城郭研究の発展に寄与しています。

普及啓発活動

若桜町では、地元小中学校での郷土学習に若桜鬼ヶ城を取り入れたり、ガイドツアーを実施したりするなど、普及啓発活動にも力を入れています。また、続日本100名城選定を機に、全国の城郭ファンへの情報発信も強化されています。

まとめ

若桜鬼ヶ城は、鳥取県八頭郡若桜町にある国指定史跡であり、続日本100名城にも選定された歴史的価値の高い山城です。鎌倉時代の創建から江戸時代初期の廃城まで、約400年にわたって因幡国東部の要衝として機能しました。

総石垣造りの山城として、本丸、二ノ丸、三ノ丸など多数の曲輪が良好に残されており、特に「行き止まり虎口」「廊下橋」「六角石垣」などの独特の防御施設は全国的にも珍しい構造として高く評価されています。

城跡へは林道を利用して車でアクセスでき、山城としては比較的訪れやすい史跡です。城跡からは若桜の町並みや周辺の山々を一望でき、四季折々の美しい景観を楽しむことができます。

若桜鬼ヶ城を訪れる際には、城下町として栄えた若桜宿の町並み散策や、若桜鉄道の見学など、周辺の観光スポットとあわせて楽しむことをおすすめします。歴史好きはもちろん、ハイキングや写真撮影を楽しみたい方にも最適な場所です。

因幡三名城のひとつとして、また続日本100名城のひとつとして、若桜鬼ヶ城は山陰地方を代表する城跡として、今後も多くの人々に親しまれていくことでしょう。

地図

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